続報が公表され次第、この記事を更新します。

東京証券取引所(以下、東証)は2026年9月28日、保険代理店などを営む株式会社アドバンスクリエイト(以下、同社)を、9月29日付で特別注意銘柄に指定すると公表しました。メディア事業での不適切会計により、5年以上にわたって決算短信などで虚偽の開示を続けていたことが理由で、あわせて上場契約違約金約0.3億円の支払いを求めています。東証は、監査証拠の偽造など、監査法人に対する組織的な偽装工作があったとも認めています。

概要

東証によると、同社と連結子会社の株式会社保険市場(以下、保険市場)のメディア事業で、売上の前倒し計上、実態のない取引、費用の繰延べ、資産の過大計上が行われていました。これにより、2021年9月期から2026年9月期第1四半期までの決算短信などの内容が事実と異なるものになっていました。特に2022年9月期は、実際には債務超過だったにもかかわらず純資産をプラスと開示し、営業利益と経常利益も赤字を黒字として開示していました。

不適切会計は、当時の同社取締役で保険市場の代表取締役だった人物が主導し、管理部門を担当する役員も一部に関与していました。保険会社や取引先を巻き込み、当時の会計監査人である桜橋監査法人に虚偽の証憑を提出したり、同監査法人が保険会社などに残高を確認する前後に「差異なし」と回答するよう求めたりするなど、監査法人に対する偽装工作が行われ、東証は「公正な監査の前提を逸脱する組織的な行為」と指摘しています。

東証は背景として、創業者である代表取締役社長からの業績へのプレッシャーを挙げました。また、桜橋監査法人が不適切会計の疑いを複数回指摘していたにもかかわらず、取締役会や監査役会、社外役員に体系的に報告・議論されていなかったとしています。経理部門の管理職が短期間で入れ替わり証憑の確認が徹底されていなかったことや、内部監査部門が不備を見つけても原因の調査や経営陣への報告をしていなかったことも指摘されています。

経緯

同社は2025年2月28日にも、保険代理店事業の手数料に関する不適切な会計処理で、2020年9月期から2024年9月期第3四半期までの決算を訂正していました。東証は2025年5月に改善報告書の提出を求め、同社は6月に改善報告書を、2026年1月に改善状況報告書を提出していました。

この間の2024年11月には、桜橋監査法人が監査品質を確保するための人員確保が難しいとして、任期満了での監査契約の継続を辞退しました。同監査法人は2024年9月期まで同社を監査し、2025年9月期からはあおい監査法人が会計監査人を務めています。

しかし、その後メディア事業でも不適切会計が判明し、同社は2026年5月に第三者委員会を設置しました。7月31日付の調査報告書では、保険市場での売上の前倒し計上が2018年12月から2025年9月までで約75億円にのぼると認定され、同社は8月14日に2021年9月期から2025年9月期までの有価証券報告書などを訂正しました。東証は、2025年の訂正の時点で不適切会計を認識していた役職員がそれを明らかにせず、誤った開示を続けたとして、これまでの改善措置では不十分と判断しました。調査や訂正にかかる費用は、約5億円の特別損失となる見込みです。

訂正による主な影響は次のとおりです(2022年9月期)。

項目訂正前訂正後
売上高94億円89億円
営業利益約0.9億円△3億円
当期純損失△12億円△16億円
純資産8億円約△0.1億円

その後の動き

同社は9月30日に再発防止策の詳細を公表しました。代表取締役社長は、次の定時株主総会で取締役に選ばれても社長を退く方針で、指名・報酬などを扱う委員会からも外れます。また、監査法人からの指摘を一元管理する台帳を2026年10月に整え、監査役、内部監査部門、会計監査人による三様監査の会議を四半期ごとに開くとしています。東証には改善計画・状況報告書を提出する予定で、日程は決まり次第公表するとしています。

同じ9月30日には、流通株式時価総額などの上場維持基準を改善期間内に満たせなかったことから、10月1日付で監理銘柄(審査中)に指定されることも公表しました。同社はスタンダード市場への市場区分の変更を申請しており、2026年9月期第3四半期末時点で約2億円の債務超過となっています。

解説

今回の公表には、東証が上場会社に対して行う措置が複数含まれています。それぞれの意味と、不正の手口である「監査法人に対する偽装工作」の内容は次のとおりです。

特別注意銘柄は、内部管理体制などに問題があり、改善の必要性が高いと東証が判断した上場会社を指定し、投資者に注意を促す制度です。指定から1年が経過すると、東証が社内の体制が整えられ、実際に機能しているかを審査します。体制は整えられていても、実際に機能していると認められない場合などは、指定が続けられます。

上場契約違約金は、上場会社が東証の規則に違反し、株主や投資者の信頼を損なった場合に、東証が支払いを求めるお金です。同社の場合は、誤った決算の開示を長く続けたことが理由です。

監理銘柄(審査中)は、上場廃止になるおそれがあることを投資者に知らせるための指定です。同社の場合は、不適切会計とは別に、市場で流通している株式の時価総額や比率に関する上場維持基準を満たしていないことが理由です。

監査法人に対する偽装工作は、監査法人に不正を気づかれないようにするための行為です。監査法人は、会社の帳簿だけでなく、取引先に直接問い合わせて取引の残高を確かめたり、契約書や請求書などの証憑を確かめたりして、決算の数字が正しいかを判断します。会社が証憑を偽造したり、取引先に口裏を合わせるよう求めたりすると、監査法人が取引の実態を確かめることは難しくなります。

関連する制度と開示

今回の件には、上場会社の経理・監査に関わる次の制度と開示が関係しています。

過年度決算の訂正:上場会社は、過去の決算に誤りが見つかった場合、有価証券報告書などの訂正報告書を提出し、決算短信も訂正します。財務報告に関する内部統制に不備があった場合は、その有効性を評価した内部統制報告書も訂正します。同社は2026年8月14日に、2021年9月期から2025年9月期までのこれらの書類と、2026年9月期第1四半期の決算短信を訂正しました。

会計監査人の異動の開示:上場会社は、会計監査人が交代する場合、交代の理由や退任する監査法人の意見などを開示します。同社は2024年11月13日に、桜橋監査法人から任期満了での退任の申し出があったことと、後任にあおい監査法人を選んだことを開示し、桜橋監査法人からは特段の意見はないとの回答を得たとしています。

三様監査:監査役(監査役会)、内部監査部門、会計監査人の3つの監査のことで、互いに情報を共有して連携することで、不正や誤りを見つけやすくなります。東証は今回、会計監査人の指摘が取締役会や監査役会に体系的に報告されていなかったことを背景に挙げており、同社の再発防止策にある監査法人の指摘の一元管理や三様監査の会議の定期開催は、この点への対応です。

監査を行う側への取組:日本公認会計士協会は2026年9月、新規上場会社などの会計不正を受けた取組の続報として、上場会社を監査する監査事務所向けのガイドラインに「監査業務編」を加えたことを公表しました。売上の計上に関する不正のリスクへの対応などについて、監査の品質を確認する際の判断の目線が示されています。

出典

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