(学園は改善計画を策定中としているため、続報が公表され次第、この記事を更新します。)

宝塚医療大学などを運営する学校法人平成医療学園(大阪市)は2026年5月29日、理事長の関係法人への不適切取引等の疑いが第三者委員会の調査報告書で指摘されているとするお知らせを公表しました。学園が公表している2025年度の計算書類によると、学園は役員が兼任する4つの法人に資金を貸し付けており、このうち合わせて7.5億円について、返済されないおそれがあるとして徴収不能引当金を計上しています。また、継続法人の前提に関する重要な不確実性も注記されています。

概要

学園はお知らせで、理事長の関係法人への不適切取引等の疑いについて、第三者委員会の調査報告書で指摘されているとしたうえで、策定中の改善計画により適切に対応し、信頼回復に努めるとしています。

役員が兼任する法人への貸付け

学園の2025年度(2026年3月期)の計算書類には、「関連当事者との取引」として、学園の役員2人が兼任している法人などとの取引が記載されています。このうち次の4つの法人には、学園が長期の貸付けを行っており、学園は貸付金の一部が返済されないおそれがあるとして、法人ごとに徴収不能引当金を計上しています。

  • 医療法人美和会(大阪市北区、病院運営):徴収不能引当金2.7億円。2025年度に受けた返済は約0.1億円で、決算日後の2026年4月7日には、運転資金として無担保で約0.5億円を追加で貸し付けています。学園は、同会の銀行借入約0.1億円に対する債務保証も行っています。
  • 社会福祉法人山の子会(兵庫県芦屋市、福祉施設運営):徴収不能引当金2.4億円。2025年度に受けた返済は1.1億円です。このほか、2025年4月28日に一時的な資金融通として1億円を仮払いし、5月16日に同額を回収しています。学園は、業務委託手数料約0.1億円も同会に支払っています。
  • HEISEI IRYO GAKUEN USA, LLC.(米国ハワイ州、不動産賃貸業):貸付金に対する徴収不能引当金1.9億円のほか、過去の年度分の未収利息にも、徴収不能引当金約0.2億円を計上しています。
  • 職業訓練法人東京都調理職業訓練協会(東京都荒川区、職業訓練):徴収不能引当金約0.5億円。注記では、資金調達額の総額の過半について学園が融資を行っている法人とされています。

この4つの法人への貸付金に対する徴収不能引当金は、合わせて7.5億円です。学園全体では、金銭債権に対する徴収不能引当金が11億円計上されています。

そのほかの関係する取引

  • 全柔協FC株式会社(大阪市北区、金融業):学園が3.5億円を借り入れ、同額を返済しています(利率1.8%)。注記では、学園が意思決定機関の構成員の過半数を占めている法人とされています。
  • 有限会社アフターメディカル(大阪府寝屋川市、介護事業):同社の銀行借入4.9億円に対して学園が債務保証を行い、学園の資産を担保にも提供しています。注記では、融資は行っていないものの、債務保証によって資金調達に重要な影響を与えている法人とされています。また、過去の年度に同社から取得した固定資産の代金として、長期未払金5.1億円と未払金約0.6億円があります。
  • 理事長:学園の銀行借入に対して、29億円の債務保証を行っています。

学園の財務の状況

学園は、経常収支差額が2023年度から3期連続でマイナス(2023年度△5.7億円、2024年度△7.1億円、2025年度△4.6億円)となっており、「継続法人の前提に関する重要な不確実性が認められる」と注記しています。この状況を解消するため、金融機関等に追加融資を要請するとしています。学園の参考資料では、定員充足率が低迷する中で、外部負債に依存した急激な事業拡大により資金事情が悪化していると分析しています。

その他の注記

  • 2026年5月25日の理事会で、2027年度から宝塚医療大学保健医療学部口腔保健学科などの募集を停止することを決定しました。
  • 2025年5月に、専門学校の卒業生から学友会費をめぐる不当利得返還等請求訴訟を提起されています。
  • 2025年7月に、学園が業務委託先に対し、過払いの業務委託料など3.9億円の返還を求める訴訟を提起しています。

解説

関連当事者との取引とは

学校法人の理事長や役員、役員やその近親者が支配している法人など、学校法人と特別な関係にある相手を「関連当事者」といい、こうした相手との取引は、内容や金額を計算書類に注記することになっています。つまり、学校法人と身内に近い関係にある相手とのお金のやり取りは、計算書類を見れば分かるようになっています。今回の学園の注記では、関連当事者との間で、資金の貸付けや借入、借入の保証などの取引が記載されています。

利益相反取引とは

理事が、自分自身や自分の関係する法人のために学校法人と取引をすることを、利益相反取引といいます。つまり、理事が学校法人の側と取引相手の側の両方に立つ取引で、学校法人にとって不利な条件でも取引が進んでしまうおそれがあります。そのため私立学校法では、利益相反取引には理事会の承認を得ることが求められており、理事会の決議では、特別の利害関係を有する理事は議決に加わることができません。今回の注記で関連当事者との取引として記載されている貸付けや借入の相手は、いずれも学園の役員が兼任している法人です。

徴収不能引当金とは

学校法人会計で、貸付金や未収入金などのうち、回収できないおそれがある金額を見積もって、あらかじめ計上しておくものです。つまり、貸付金などの一部が回収できない見込みであることを、先に費用(損失)として帳簿に載せておくもので、企業会計の貸倒引当金に当たります。学園は、回収が懸念される債権について、回収できないと見込まれる額を個別に見積もって計上するとしています。今回の注記は、役員が兼任する法人への貸付金のうち、合わせて7.5億円は返済されないおそれがあると、学園自身が見込んでいることを示しています。一方で、引当金を計上している美和会には、決算日後に無担保で追加の貸付けが行われています。

継続法人の前提とは

計算書類は、法人がこの先も活動を続けることを前提に作られています。その前提が崩れるおそれがある場合、つまり、資金が足りなくなるなどして、破産などにより法人として活動を続けられなくなる可能性がある場合に、その旨を注記します。今回の注記は、3期連続の赤字などから、この先も活動を続けられるかどうかに重要な不確実性があることを、学園自身が示しているものです。企業会計の「継続企業の前提」に当たります。

関連する制度と開示

2025年4月施行の改正私立学校法

2025年4月に施行された改正私立学校法では、役員による特別背任、目的外の投機取引、贈収賄などに刑事罰が新設されました。監事についても、理事会・評議員会への出席や意見の陳述が職務として明記されています。

計算書類の注記

学校法人会計基準では、「関連当事者との取引」や「学校法人間の財務取引」に関する注記が求められています。2025年度からは、「子法人」に関する注記も加わりました。今回の学園の計算書類でも、これらの注記で関係法人との取引の状況が示されています。

出典

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