(2026年10月21日公開。会社は10月中の監査意見取得を目指すとしているため、続報が公表され次第、この記事を更新します。)
ニデックは2026年9月30日、2026年3月期の有価証券報告書を提出しました。会計監査人のPwC Japan有限責任監査法人は、財務諸表と内部統制報告書のいずれについても意見を表明しませんでした。理由には、不適切な会計処理に関与した役職員の一部が財務報告で責任ある立場にあることなどが挙げられています。
概要
ニデック株式会社は2026年9月30日、第53期(2025年4月1日〜2026年3月31日)の有価証券報告書を関東財務局へ提出しました。提出期限は関東財務局の承認を得て同日まで延長されていました。
会計監査人のPwC Japan有限責任監査法人は、次のいずれについても意見(結論)を表明しませんでした。
- 連結財務諸表・財務諸表:意見不表明
- 内部統制報告書:意見不表明
- 2026年3月期第3四半期決算短信:レビューの結論不表明
意見不表明の理由
会社の開示によると、監査法人は主に次の点を理由に挙げています。
- 不適切な会計処理等に関与した役職員の一部が財務報告プロセスで責任ある立場にあり、経営者の陳述や記録の信頼性に重大な懸念があること
- 連結で計上した減損損失6,322億円について、一部の資金生成単位の計上額や計上時期の根拠となる監査証拠を十分に入手できなかったこと
- 比較情報(2025年3月期)の修正再表示が妥当かつ網羅的かを判断する証拠を入手できなかったこと
個別財務諸表では、関係会社株式評価損1,835億円なども同様に証拠不足とされています。
業績
有価証券報告書によると、親会社の所有者に帰属する当期損失は5,646億円、親会社所有者帰属持分は7,941億円(前期1兆2,398億円)でした。
その後の動き
- 2026年10月1日:会社の説明資料に「10月中 期日を意識しながら監査意見取得に向けて残課題を解消」と記載されました。ロイターは、監査法人が同日の会社の会見で「最終的に監査意見を提出するという責務は全うしたい」と説明したと報じています。
- 2026年10月2日:日本公認会計士協会は、会社名を示さずに「産業用電子機器メーカー」の有価証券報告書が監査意見不表明で提出されたことについて、「資本市場の信頼性の観点から遺憾な事態」とするプレスリリースを公表しました。
- 2026年10月20日:会社は役員責任調査委員会の調査報告書を公表し、損害賠償請求その他法的措置を行うべきか検討しているとしました。
PwC Japan有限責任監査法人は、2026年3月3日に第三者委員会の調査報告書の公表を受けたコメントを出しています。
解説
「意見不表明」とは
監査人は、財務諸表が適正に作成されているかについて、監査報告書で意見を述べます。問題がなければ「無限定適正意見」となり、問題がある場合の「除外事項付意見」には、限定意見・否定的意見・意見不表明の3類型があります。適正表示の枠組みでは、限定意見を「限定付適正意見」、否定的意見を「不適正意見」と呼びます。
どの意見になるかは、問題の種類と影響の大きさ(「重要」か、「重要かつ広範」か)の組み合わせで決まります。
| 問題の種類 | 影響が | 影響が |
|---|---|---|
| 財務諸表に | 限定付適正意見 | 不適正意見 |
| 十分かつ | 限定付適正意見 | 意見不表明 |
意見不表明は、「財務諸表が間違っている」という判断ではなく、「適正かどうかを判断するための証拠が得られなかった」という結論です。監査の基準では、証拠を入手できず、未発見の虚偽表示があるとすればその影響が「重要かつ広範」と判断する場合に、監査人は意見を表明してはならないと定めています。
ニデックの開示では、監査法人は意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手できなかったとしています。ロイターによると、監査法人は会見で、影響も広範だと判断したと説明しました。
関連する制度と開示
経営者の誠実性と経営者確認書
今回の理由の一つは、不適切会計に関与した役職員が財務報告で責任ある立場に残っていたことでした。監査の基準では、経営者の誠実性に深刻な疑義があり、経営者の責任に関する確認事項に信頼性がないと判断した場合、監査人は財務諸表に対する意見を表明してはならないと定めています。
有価証券報告書の提出期限の延長
ニデックは、関東財務局の承認を得て提出期限を2026年9月30日まで延長し、その期限日に提出しました。結果として、監査意見がないままの提出となっています。
東証の制度との関係
東証の上場廃止基準には「虚偽記載又は不適正意見等」があります。監査報告書に「不適正意見」又は「意見の表明をしない」旨等が記載され、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかと東証が認めるときが対象です。
また、東証は意見不表明などを、「特別注意銘柄」に指定できる場合の一つとしています。指定された会社は、原則として指定から1年経過後の審査までに内部管理体制等を整備・運用することを求められ、適切に整備されていないと認められた場合は上場廃止となります。ニデックは2026年1月28日に、特別注意銘柄の指定に伴う改善計画・状況報告書を開示しています。
過年度の修正と分配可能額
会社は同日、「過年度修正再表示に伴う分配可能額超過に関するお知らせ」も開示しています。
